【連載1/2】
京町家と共に残す
オフィスに関わる人が
大切にする想い
紅中の京都オフィスの設計・改修を担当してくださった毛利さんは京町家を大事にする想い、職人さんへの憧れやリスペクトする想いを持っています。
「建物を建てていく、改修していく中で技術が主役になるのではなく人が手掛けるということに魅力を感じています。」
使い手にも作り手にも寄り添う設計士”毛利隆之”が語る京町家改修について掘り下げてみました。
ー元の構造を取り戻す改修をしながらも、今後の利用方法にマッチしたものを考える改修
紅中:京都オフィスのどこの部分を見てもどこか京町家らしさが残っていますね。
毛利:はい。京町家に住みたい・京町家を利用したいという方は不便さがあっても古き良きを感じたいと思っている方が多いように感じます。なので”らしさ”は残していきたいですね。
紅中:毛利さんが考える理想の古民家改修(京町家等)とはどのようなものでしょうか。
毛利:「元の構造を取り戻す改修をしながらも、今後の利用方法にマッチしたものを考える改修」です。元々の良さも現代の良さも兼ね備えたものが理想だと考えています。
紅中:なるほど。では、京都オフィスの外観の中で京町家らしいと感じる部分はどこですか。
毛利:まず目につくところは瓦屋根ですね。そして化粧の柱・梁の軸組みとその間の漆喰塗りを合わせた真壁造り(※1)の躯体、木製の建具ですね。
※1 真壁
木造の家で柱や梁が見えるような壁の構造
紅中:躯体に”らしさ”が表れているということですね。
毛利:そうですね。しかも躯体が見えていて、この柱がこの建物を支えているんだな分かるところが町家や古民家が好きな人たちが魅力を感じるひとつのポイントだと思います。構造体が見えていて美しいというところが良さですね。
紅中:確かに柱が見えていることで構造体がわかりやすくなっていますね。木製の建具にも特徴があるのでしょうか。
毛利:大きな木製の格子戸と出格子が特徴です。出格子とは出窓状の格子ので、古くから町家の外観としては大切にされていたものです。京都オフィスでは一階をギャラリーとして使用しているので出格子にも作品を飾ってディスプレイすることもできます。
ー「他にはない畳間の会議室を作りたい」という想いを取り入れました
紅中:京都オフィスの中でお気に入りの場所はありますか。
毛利:元々の丸太梁を表しにしつつ勾配天井とすることで広々とした執務スペースですね。お客様がいらっしゃった際にも「素敵な事務所だな」と思ってもらえると社員さんにとっても良いかなと思います。この建物はなんといっても事務所スペースがメインとなる場所なので、使いやすくかつ印象的な場所になればと思いました。
紅中:玄関から上がってきて最初に目に入ってくる丸太梁はインパクトがありますよね。開放的な勾配天井とは対照的に奥の会議室は天井が低く思えるのですが、、
毛利:そうなんですよ。会議室の天井は他の部屋より思い切って天井を低くしてあります。
勾配天井の広々とした執務スペース
天井の高さを変えることでメリハリが
紅中:それはなぜでしょうか。
毛利:天井が低いとなんとなく床に座りたくなりませんか?自然と座りたい気持ちになりくつろぐ気持ちになりやすいんです。それ以外に、他の部屋と高さを変えることで空間にメリハリをつける効果もあります。
紅中:確かに座りたくなりますね、、、!そもそもオフィスに畳間があることが結構斬新なアイデアだと思うのですが、なにかきっかけがあったのでしょうか。
毛利:「他にはない畳間の会議室を作りたい」という要望がきっかけですね。本当は囲炉裏も作りたいと伺ったのですがさすがに火元も危ないし、何に使うのかという意見もあったみたいで(笑)。その後、住宅の要素を入れることで改修後のイメージを持ってもらいやすくするということも含めて今の形になりました。
紅中:素敵な熱い想いが秘められた畳間だったんですね。知りませんでした、、、
毛利:素敵ですよね。京町家にも欠かせないですし、なにより面白いと感じたので畳間を取り入れました。くつろいで会話ができるリビングをイメージした会議室(ミーティングスペース)です。
ここはオフィス内の一番奥に配置されていて、実は使っているものも上質なものが多いんですよ。
紅中:そうなんですか。すごく落ち着く空間になっていますよね。私はここの会議室が京都オフィスの中で一番お気に入りの場所なんです。
毛利:ありがとうございます。ヨシ張りの天井だったり、土壁も上等な水ごね仕上げが施されていたり、押し入れの戸に唐紙を使用したり、ここの会議室が一番力が入っているんです。床の間もあって旅館のような雰囲気があるところもポイントですね。
紅中:たくさんのこだわりが込められているのですね。空中デッキも解放感があって素敵ですよね。
毛利:改修前は増築前の室内だったのですが改修の際に空中デッキにするのはどうかと考えて中村社長に提案したところ、おもしろいねと言っていただけたので空中デッキを設置することになりました。外部・外構とのつながりがあることで一気に開放感が生まれます。
紅中:特にこだわった点はありますか?
毛利:一階の駐車場から二階のデッキ越しに一本の木を植えたことですね。やってみたかった演出ができて嬉しいです。また、空中デッキを設置することで社員のみんなとオフィスでバーベキューができたりちょっとした日向ぼっこができたりと、オフィスに楽しい場所があることも良さだと思います。
紅中:バーベキュー!いいですね。開放感を味わえるうえにコミュニケーションも取れる場がオフィスにあるのは嬉しいです。