※2022年7月時点の情報です。
ウッドショックとは
ウッドショックとは、主に木造住宅に使用される柱や梁用の木材の需要が供給を上回り、木材の不足が続いたことで起こった「木材価格の高騰・急騰」のことを指します。
1970年代に発生した「オイルショック」になぞらえてこのように呼ばれています。
今回のウッドショックは様々な原因が絡み合って起こっており、終息の目処を立てるのはなかなか難しい状況です。
今回はそんなウッドショックの要因と現状についてまとめてみました。
値上がりの要因:初期
アメリカ・中国の住宅バブル
コロナウイルス感染症拡大の影響で自宅待機や在宅での仕事が増えてことから、住宅に対する意識が高まり、新築住宅やDIYの需要が大幅に増えました。
また、アメリカではコロナウイルスの影響で金利が大幅に下がったことも住宅需要に火をつけました。
中国では、コロナウイルスの拡大を早期に抑え込んだことを受け、経済回復に対する期待値が大きくなり、木材の取引が活発に行われました。
コロナウイルスの影響による生産量の減少
コロナウイルス感染拡大の影響でロックダウンが起こり、生産工場の操業停止や出社人数を控えるなどの影響から製材される木材の生産量が大幅に減少しました。
また、コロナウイルス感染症が拡大する以前から虫害に悩まされていた北米地域では、虫害に加えコロナウイルスの影響による人手不足から生産量が減少しました。
コンテナ不足
コロナウイルスの感染拡大の影響で“巣ごもり需要”が増え、その影響で世界的に運搬する商品量が増えました。それとは反対にロックダウンなどで外出制限が増えたことで、港やトラック運輸などの運送に携わる人手が足りず、コンテナの回転率が下がりコンテナ不足が起こり、現在もまだ続いています。
また、2021年3月にスエズ運河で起こった大型コンテナ船の座礁事故でコンテナ輸送が遅れたこともコンテナ不足に影響しています。
値上がりの要因:現在
急激な円安
円安の原因はアメリカの金利が引き上げられ、金利の低い日本よりも高い金利のアメリカへお金が流れる事で急激な円安が発生したと言われています。
その影響で輸入にかかるコストが高くなり、それと連動して輸入木材の価格も高騰しています。
原油価格の高騰
ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、ロシアからの原油輸出が滞るのではという懸念から原油価格が高騰しました。
原油価格の高騰によって輸入時やトラック運輸などの運送コストが高くなったことも木材の価格が下がらないことに影響しています。
ウクライナ情勢
2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻の影響で、ウクライナの木材だけでなくロシア材の輸出も激減しました。
日本のロシア材の輸入量は多くはありませんでしたが、世界的に木材の流通量が減った影響で木材不足に拍車がかかり、価格の高騰が続いています。
合板価格は5年前に比べて2倍近くに
ウッドショックの影響から、針葉樹合板の市場標準相場木材価格は5年前に比べて大幅に上昇しています。2022年5月の価格を2017年5月と比べてみると、ラワン合板は約1.6倍、針葉樹合板は約1.8倍と2倍近くの価格になっていることが分かります。
※ラワン合板(1800×900×12)、針葉樹合板(1820×910×12)を基準に計算。
今後も世界情勢と価格変動を注視する必要が
6月に入りアメリカが大幅な利上げを実行したことや、7月にはEUでも利上げが予定されていること、日銀が金利の引き上げを行わないことなどを鑑みると、円安が今度も続くだろうとの指摘がされています。
原油価格については、OPECが6月の会合で石油の増産を決定しましたが、需要が依然として減らないことから価格が大幅に下がるとの予測はほとんど出ていません。
合板においてもモノによって価格が変わる可能性も
木材自体の価格については、樹種や部材によって価格の違いが出てくる可能性があります。
合板においては、全国的にみると需要が供給量を超えています。
【輸入合板において】
中国や東南アジアからの輸入がばらつきはありつつも回復傾向にある影響で、合板の在庫量が安定してきた地域もあり、合板価格が下降する可能性も指摘されています。それとは反対に、一度上がった価格を下げる動きは小さく、大幅な値下げはないだろうとの指摘もあります。
【国産合板において】
6月半ばに合板メーカーの工場で火災が起こった影響で市場の混乱が予想されており、今後も市場の動向を注視する必要があります。
ウッドショックに対応するなら
輸入材から国産材に切り替える
熊本の球磨地方で採れたスギ・ヒノキの大径木を使った国産材についてご紹介。
輸入材の代替品を使用する
ウッドショックによる輸入木材の不足に対応するために国産の合板を使用して作った間柱についてご紹介。
リサイクル材を使用する
(後日公開)
いわゆるB級品といわれる合板をリサイクルしてA級品にリサイクルしている紅中のグループ会社「アラセ」の取り組みについてご紹介。
参考
どうなったウッドショック;価格の高止まりが需要を抑制?|その他の研究・分析レポート|経済産業省 (meti.go.jp)
木材価格市況標準相場|東京木材問屋協同組合 (mokuzai-tonya.jp)
市況通信|東京都ベニヤ板問屋共同組合、日本合板商業組合