縁あって。シリーズスタート!
紅中の仕事は、建材や住環境だけではありません。
日々さまざまな場所へ足を運び、多くの人とのご縁をいただいています。
このシリーズでは、その出会いの中で生まれたお話や取り組み、人柄に触れていきます。
そんな“縁”から生まれたインタビューシリーズが『縁あって。』です。
今回ご紹介するのは、一般社団法人・少年PROJECT 佐藤さんです。
若者の自殺率や孤独、生きづらさ。
社会課題として語られることが増えた一方で、その解決策はまだ模索が続いています。
そんな中、「すべての人の生きる理由を追求する」を理念に活動しているのが少年PROJECTです。
音楽祭や映画祭の企画、シェアハウス運営など多彩な活動を行う中で、食を通じて人と人のつながりを生み出す取り組みを担っているのがフードサービス事業部の佐藤さん。(以下敬称略)
今回は、活動への想いから今後のビジョンまで、お話を伺いました。
──まず、少年PROJECTについて教えてください。
佐藤:私たちは「すべての人の生きる理由を追求する」という理念で活動しています。
背景には、日本の若者の自殺率の高さや幸福度の低さといった課題があります。
今の社会には、「いい学校に行って、いい会社に入って、安定した生活を送ることが幸せ」という価値観がまだ根強くあると思うんです。でも、その価値観に違和感を抱いていたり、生きづらさを感じていたりする若者も少なくありません。
そういう人たちが、自分の人生を少しでも前向きに感じられるようなきっかけをつくりたいと思っています。
──活動はどのように始まったのでしょうか。
佐藤:代表自身が、若者の自殺や心の病のニュースに強い問題意識を持ったことが始まりだと聞いています。
いろんな経験のなかで、「自分はこれから先どういう風に生きたいのか」と思ったときに無邪気さとか子供の頃の遊び心みたいなものを忘れない、少年のような生き方がしたいし、誰かに喜びや楽しさを与えられるようなエンターテインメントで社会を変えていきたいという思いから立ち上がった団体です。
学生団体として活動した後に法人化し、今年で3期目になります。今はメンバーや賛助会員を含めて30人ほどが関わっています。
──少年PROJECTの特徴はどんなところだと思いますか。
佐藤:一言でいうと、「総合的なエンターテインメントで社会課題に向き合うこと」だと思います。
私たちは、人を楽しませることをすごく大事にしています。
課題を解決しようと思うと、どうしても「正しいことを伝える」方向に行きがちなんですけど、それだけでは人はなかなか変わらない。
むしろ、楽しかったり、ワクワクしたり、夢中になったりする体験の中でこそ、人の価値観や行動は変わっていくんじゃないかと思っています。
メンバーの日常
クリエイティブチームが手掛ける非日常空間「JAXA宇宙科学講演会2026」
──佐藤さんご自身は、どのような経緯で参加されたんですか?
佐藤:大学1年生の頃、先輩から「山にテーマパークをつくろうとしている面白い人がいるから会ってみたら?」と紹介されたのがきっかけでした。
今振り返ると不思議ですけど、「面白そうですね」と会いに行ったんです(笑)。
──もともとこういった活動に興味があったんですか?
佐藤:エンターテインメントそのものというより、昔からどういう形であっても「食で人を幸せにしたい」という想いがありました。
ただ、それをどういう形で実現したらいいのかが分からなかったんです。
農業を見たり、ビジネスを学んだり、食育について考えたりしながら、自分なりに模索していました。
──その中で少年PROJECTに惹かれた理由は?
佐藤:当時はビジネスの考え方の面で代表とお話する機会が多くて、その考え方にすごく共感しました。
食育もそうなんですけど、「こうしましょう」「これが正しいですよ」と伝えるだけでは行動変容って起こりにくいんですよね。
でも、人がワクワクする体験をすると、気づいたら価値観が変わっていたりする。
「楽しさから人を変えていく。」というアプローチの仕方に惹かれました。
──現在はどのような活動を担当しているのでしょうか。
佐藤:フードサービス事業部を立ち上げて活動しています。
テーマは一貫していて、「食を通じて人をつなぐこと」です。
自社イベントの企画運営もしますし、地域の食材を活かしたケータリングや企業向けの体験プログラムなども手掛けています。
──料理を提供するというより、体験をつくるイメージでしょうか。
佐藤:まさにそうですね。
例えば地域の食材を使う場合も、ただ料理として出すだけじゃなくて、その食材が生まれた土地や文化、生産者の想いも含めて届けたいと思っています。
「何を食べるか」だけではなくて、「誰と食べるか」「どこで食べるか」まで含めて体験なんです。
紅中が佐藤さんと出会ったのは、花背で開催されたイベント。その土地で採れた食材を使った料理をいただきました。お話を伺う中で印象的だったのは、料理に使う山菜を自ら採りに行ったということ。食材だけでなく、その土地の文化や人とのつながりも一緒に届けようとする姿勢に、「食で人をつなぐ」という想いが表れているように感じました。
──印象的なイベントについて教えてください。
佐藤:淡路島で開催している1泊2日の食体験イベントですね。満天の星空の下でピザを焼いています。
参加者は15〜20人ほどで、初対面の方も多いんです。一緒に食材を準備したり、料理をつくったりして過ごします。
──どんな雰囲気になるんですか?
佐藤:最初はやっぱりみなさん緊張しています(笑)。
でも、一緒に火を起こして、ご飯をつくって、食卓を囲むうちに自然と会話が生まれてくるんです。
気づけば焚き火を囲みながら、自分の人生や将来の悩みを語り合っていることもあります。
──なぜそんなことが起こるんでしょう。
佐藤:食には人を安心させる力があると思うんです。
仕事の肩書きや立場ではなく、一緒に何かをつくり、一緒に食べる。
その時間があるからこそ、本音で話せる空気が生まれるんじゃないかなと。
──「食で人をつなぐ」という言葉の意味が分かる気がします。
佐藤:私自身が大事にしているのも、まさにそこです。
人と人とのつながりでもいいし、生産者や地域とのつながりでもいい。
食文化や歴史とのつながりでもいい。
食を起点に何かしらのつながりが生まれることを大切にしています。
星空レストランの様子
──現在の活動で特に考えていることはありますか。
佐藤:イベントだけで終わらせたくない、ということですね。
今届けている体験は、どちらかというと非日常のものが多いんです。
もちろんそれだけでも価値はあります。でも、人が本当に生きるのは日常なんですよね。
──確かにそうですね。
佐藤:例えばイベントで「食ってこんなに幸せなんだ」と感じても、日常に戻ったらまた孤立してしまうかもしれない。だから最終的には、そういう豊かな食の時間を日常の中にもつくっていきたいんです。
社食でもいいし、シェアハウスでもいい。
「今日はみんなでご飯を食べようかな」と思った時に、それを自然に選べる環境がある。それだけでも人とのつながり方は変わると思うんです。
──食と人とのつながりの考え方がまた変わってきますね。
佐藤:非日常の体験で食の楽しさに気づいて、日常では誰かと食卓を囲む時間を選ぶ。逆に、日々の暮らしの中で豊かな食の時間を過ごしている人が、週末には地方へ行って生産者さんと出会ったり、その土地の食文化に触れたりする。そんなふうに、日常と非日常がゆるやかにつながる状態をつくれたらと思っています。
──今後どのようなことに挑戦したいですか。
佐藤:最終的には、都市と地方の両方で事業を展開しながら、『食でつながる暮らし』そのものを提案できる存在になりたいんです。
食が人生を豊かにする選択肢として、当たり前に選ばれる未来をつくっていきたいと思っています。
──最後に、若い世代へメッセージをお願いします。
佐藤:今見えている世界だけが、すべてじゃないと思うんです。
学校や職場、普段いるコミュニティの中だけで考えていると、それが世界の全部のように感じてしまうことがあります。
でも一歩外に出ると、本当に面白い生き方をしている人や、自分の知らない価値観に出会える。
私自身もそういう出会いによって人生が変わりました。
だからこそ、少しだけ勇気を出して、新しい場所に足を運んでみてほしいなと思います。
知らなかっただけで、面白い世界はたくさんありますから。
“縁あって”出会ってみて
今回の取材で特に印象に残ったのは、佐藤さんが同世代でありながら、「若者の生きがい」という大きなテーマに真剣に向き合い、行動し続けている姿でした。
お話を聞きながら、自分自身の食事との向き合い方についても考えさせられました。
忙しい日々のなかで、いつの間にか食事は「お腹を満たすための作業」になっていたように思います。できるだけ早く、安く、簡単に。気づけばコスパやタイパを優先して選択することが当たり前になっていました。
一方で、友人や家族と囲む食卓は楽しいですし、イベントや旅先で食べる食事はなぜか特別な時間として記憶に残ります。
取材を通して気づいたのは、その“楽しい食事の時間”を非日常だけのものと考えていたことでした。
佐藤さんが目指しているのは、特別なイベントをつくることだけではなく、そうした豊かな食の時間を日常の暮らしの中にも増やしていくこと。食を通じて人と人がつながり、「明日が少し楽しみになる」きっかけを生み出していくことでした。
当たり前のように過ごしている毎日のなかにも、誰かと食卓を囲む時間や、人とのつながりを感じる瞬間が増えていけば、暮らしはもう少し豊かなものになるのかもしれません。
少年PROJECTの活動がこれからどのように広がっていくのか。そして、その先にどんな「明日を楽しみにできる社会」が生まれるのか。今後の活動を、私たちも楽しみにしています。
取材協力