ビジネスの種
2026.07.28 UP

原木市場で学ぶ
木材流通の原点
ーものづくりを知るvol.3

ものづくりを知る
Vol.3「ウッドピア松阪」

私たちが普段目にする木製家具や建築材料。
その材料となる木は、山で伐採された後、どのような過程を経て製品へと姿を変えるのでしょうか。

今回訪れたのは、木材流通の起点ともいえる「原木市場」。
そこには、一本一本の木を見極める目利きの技術と、人と人の信頼関係、そして木の価値を未来へつなぐ仕組みがありました。

原木市場:ウッドピア松阪
三重県松阪市にある日本初の木材コンビナート。国産材を中心とした原木の委託販売をおこなっています。

今回は買い手目線のグリーンウッドタクミ協同組合の浦田様と、売り手目線の株式会社川口屋の川口様にご案内いただき、お話をお聞きしました。(以下敬称略)


Q.まず最初に、原木市場とはどのような場所なのか教えてください。
A.山から運ばれてきた原木を売買する場所です。

浦田:原木市場には、伐採された丸太が集められ、製材所や木材業者などが買い付けにやってきます。
ここで競りが行われ、木の状態や品質、用途に応じて価格が決まります
一見すると丸太が並んでいるだけに見えますが、実は木材流通のスタート地点。家具や建築材として使われる木材は、ここからそれぞれの用途に合わせて旅立っていきます。

 

Q. 原木市場はいつも同じような様子なのでしょうか。
A. 実は季節によって大きく変わります。

浦田:今回見学いただいた時期は、実は一年の中でも出材量が少ない時期なんです。そのため市場に並ぶ原木の量も比較的少なく、競りも午前中で終わることがあります。
一方で、9月〜10月頃になると市場はぐっと活気づきます
良質な原木が多く集まり、買い手も増えるため、市場全体が賑やかな雰囲気になります。

 

Q.素人目にはどれも同じように見えてしまうのですが、どのような違いがあるのでしょうか。
A. 育った山や環境によって大きく異なります。
浦田:同じ樹種でも
・どの山で育ったのか
・山のどの場所で育ったのか
・誰が管理した山なのか
によって木の性質は変わりますね。さらに、年輪の詰まり方や節の有無、真っすぐさなどによって価値も変わります。
「この山なら間違いない」という産地への信頼が評価につながることもありますよ。

原木市場では出荷者ごとに並べられており、どこで育った木なのかを把握できるようになっています。製材業者は、出荷者や産地ごとの特徴を見極めながら、用途に適した原木を選定しています。

Q. 良い木はどうやって見分けているのでしょうか。
A. 「この木からどんな製品が取れるか」を想像しながら見ています。

浦田:まずは木が真っすぐかどうかですね。
やっぱり真っすぐな木ほど製材しやすいですし、無駄なく材料を取ることができます
そのほかにも、
・節が少ないか
・年輪が均一か
・木目がきれいに出そうか
といった点を見ています。原木は製材するまで中身が完全には分かりません
だからこそ、木の形や表面の状態から「この木なら良い材料が取れそうだ」という可能性を見極める力が求められます。

丸太の側面に見える節の跡は、その木が成長する過程で枝があった証です。見た目の美しさが求められる家具材や内装材には、節の少ない無地の原木が選ばれますが、構造材など目に触れない部分では節のある原木も活用されます。用途に応じて原木を見極め、無駄なく使い分けることも製材の大切な技術の一つです。

年輪の幅が揃っていると、木目は規則的で整った印象になり、年輪の幅にばらつきがあると、木目は不規則で個性的な表情を見せます。年輪の幅が比較的均一な杉は、安定した環境で育ったことを示しています。
また、色は白い部分は白く、赤身部分はきれいなオレンジ・ピンクのものが良いとされています。

Q. 競りではどのように価格が決まるのでしょうか。
A. 原木の品質だけでなく、市場の流れや需要も影響します。

川口:人気のある原木には複数の買い手が集まることもあります。逆に売れにくい原木もあります。
だから私たちは、「この木ならこういう材料が取れますよ」という情報が伝わるよう工夫をしています。
丸太として出荷させるだけはなく、どう見せるかも大切な仕事なんです。
例えば、
・切り口をきれいに整える
・極力曲がっている部分が入らないようにする
・規格に合わせて長さを確保する
といった工夫です。
丁寧に扱われた木は、それだけで買い手からの印象も変わりますからね。

VM編集者が見た!感じた!

木は伐採してすぐに市場へ並ぶわけではありません。良い状態で市場へ出せるよう、伐採の時期を逆算し、山で寝かせたり乾燥させたりと、たくさんの工程を経て準備されていることを知りました。特に「9〜10月に良い状態で出荷するために伐採時期を調整する」という話からは、木にも“旬”があることを実感しました。

また、原木一本一本には、その木を育ててきた山や人の努力が詰まっています。市場では、そうした背景を読み取りながら木の価値を見極めており、「この山なら間違いない」といった出荷者や産地への信頼も大切な判断材料になっているそうです。
木材の取引というと価格や品質だけの世界を想像していましたが、実際には人と人とのつながりや信頼関係によって支えられていることが印象的でした。原木市場は、木を売買する場所であると同時に、山と人、そしてものづくりをつなぐ場所なのだと感じました。


 

Q. 原木市場の隣には製品市場もありますが、何が違うのでしょうか。
A.原木ではなく、製材された商品の市場です。

浦田:原木市場で取引されるのは丸太の状態の木材。一方、製品市場で取引されるのは、製材所で加工された板材や角材です。
ここでは、柱材・梁材・造作材・化粧材などが並びます。
ここには地元だけでなく、全国各地から買い手が訪れます。
住宅用の材料を探す人もいれば、神社仏閣や公共施設などに使う特殊な材料を探しに来る人もいます。必要な材料を直接見て選べるため、多くの木材関係者にとって重要な市場になっています。

 

Q. 製品市場ではどのような木材が高く評価されるのでしょうか。
A. 節が少なく、美しい木目を持つ化粧材です。

浦田:特に評価されるのは、木目が美しく節の少ない材料です。
市場では「無地材」と呼ばれ、意匠性が高い化粧材として使用されます。例えば「4面無地」というのは、柱の4面すべてに節がない状態を指します。
同じ一本の原木からでも、このような材料が取れる量は限られているため、価値も高くなります。さらに、製材技術によって生まれる価値が変わるため、製品市場は職人や製材所の技術力が見える場所でもありますね。

製品市場の様子。柱材や化粧材など、用途に応じて製材された木材が並びます。原木市場と同様に競りが行われ、落札された製品にはラベルが付けられ、出荷されていきます。

製品に書かれた「2ム」「3ム」は、それぞれ「2面無地」「3面無地」を表す表示です。節のない面の数を示しており、製品の品質や特徴を見極める目安になっています。

VM編集者が見た!感じた!

最初は整然と並ぶ木材を見ても、その違いはよく分かりませんでした。しかし説明を聞きながら見ていくと、木目や節の有無、表示された記号一つひとつに意味があることを知り、製品を見る楽しさやおもしろさも知ることができました。
木材は一つとして同じものがありません。その個性を見極めながら価値をつくり出す人たちの仕事の奥深さを感じました。


取材協力

ウッドピア松阪

グリーンウッドタクミ協同組合

株式会社川口屋