セイショク株式会社とは
セイショク株式会社は1880年に倉敷市で織物製造業からスタートした140年以上の歴史のある会社です。長い歴史の中で、現在では岡山工場で染色加工事業を中心にワーキングユニフォーム記事・人工皮革、カラーデニム生地の染色整理加工を中心に手掛けています。
歴史ある染色加工事業の会社が始めた新しい布づくりとは、、、
VENICHU MAGAZINE編集部(以下、VM):NUNOUSはどのようにして生まれたのでしょうか。
清水:現代表の姫井が代表就任時に、本業で出てしまう廃棄布の量に驚き、環境問題やSDGsを掲げる世の中であってはならないことだとアップサイクル業に意を決したことがスタートです。
姫井は以前に食品会社に勤めており、食品業界では廃棄・ロスを極限まで減らす行動に注力していることを身をもって知っていました。それもあり、セイショクに入社すると廃棄布の量にとても驚いたそうです。
VM:驚くほどの廃棄布の量、、、実際に年間でどのくらいの量が廃棄布として出るのでしょうか。
清水:衣服になり切れなかった布・廃材(規格外品)が日本だけで年間900万平米あると言われています。
45㎝幅の布にしてを並べると地球半周分してしまうくらいの量が服にならずに捨てられているんです。
VM:年間で地球半周分ですか!?消費者側だと全然知らない情報ですね。
清水:はい。もちろん、着古した服をリサイクルすることや、リメイクするアップサイクルもありますよね。
それは世の中に顕在化されていますが、私たちが素材にしている服にならなかったこの布たちは、潜在化してしまっていて全く世に出ることなく見えずに捨てられているんですよ。

工場に保管されている規格外品

小さな汚れも見逃さずにチェック
VM:どのような布が廃棄になるのでしょうか。
清水:セイショクでおこなっているような染めた反物を納める際、50メートル巻きになってはじめて1つの反物として出荷できます。
50メートルの間に少しでもシミや折れ筋がついていると商品にならず廃棄に回されます。
今までは不備が見つかった反物は買取し、費用をかけて処分するしかなかったんです。
VM:セイショクさんでも1日で多くの廃棄布が出ますか。
清水:そうですね。1日作業して10個くらいの規格外品は出ます。
染色担当者が丁寧に染め上げて、品質チェックもしっかりおこないます。お客様からの信頼を得るために高い品質の維持を意識しているので、その厳しい基準を乗り越えるためには規格外品がなくなることは無いと思います。
この業界ではどこの企業も同じ悩みを抱えていると思うので、最終的には同業種の方の回収先になれればいいなと考えています。
VM:捨てるものを回収して新しいものに作り替える。どんどん広がっていくといいですね。
清水:はい。布の接着に使用しているバイオポリマーフィルムも食べられない・燃やしてしまうサトウキビを使用したものを採用しています。
最初は樹脂のことなど全然知らなかったので科学的なものを使用しなければいけないかなと思ったのですが、知り合いの方に紹介していただき接着材も環境にやさしい”廃棄”されるものを使用できています。
”ムダ”のない製品づくり / こんなことにも挑戦してます \
清水:積層した布と接着剤を圧着し、既定の大きさに切断すると周りに布や接着剤がはみ出した部分が出てきます。そこの部分はさすがに使えないだろう、、、と思っていたのですが、工場に見学に来てくれた方がこれも使えるのではとおっしゃってくださり挑戦してみました。
端っこの部分だけを寄せ集めて同じようにバイオポリマーフィルムと共に再度圧着します。すると通常のNUNOUSとは違う柄や断面が生み出されたんです。
また、小さな布の端切れも積層は難しいので寄せ集めてNUNOUSとして製品化しています。これも型に手作業で端切れとバイオポリマーフィルムを並べていく大変な作業なんです。
全ての部分をムダにしないものづくりを今後も挑戦していきたいですね!

端を切り取った部分。これをぶつ切りにして再度塊にしていく。

右下のこけしは、切り取った部分を固めてできたNUNOUSを使用。

小さな端切れをあつめて圧着することでより細かい模様が浮かび上がる。
VM:NUNOUSという製品名の由来を教えてください。
清水:NU=新しい NUNO=布 US=明日 で NUNOUS(ニューノス)と名付けられました。
VM:まさに新時代のアップサイクルを感じる素敵な名前ですね。
清水:今は主流となっているファストファッションが影響し、1シーズンや2シーズンくらいでちょっと色が褪せてきてしまったから捨ててしまおうというような文化ができていると思います。
そんな文化のベースの部分を業界が作ってしまっているというのは、世の中の流れで仕方ないことでもありますが考えなければいけない部分だなと思います。
大量消費・大量生産の文化の中にいるのであれば、いるなりにどうにか良い方向へ向く努力もしないといけないなと思っています。
VM:布の再生としては新しい形だなと感じるのですが、プレスをするという発想はどのようにして生まれたのでしょうか。
清水:いろんなことを試した結果が今のNUNOUSの形になっています。
最初はプレスした塊の状態で売ろうと思ったが、重たいし高いしどうしたらいかわからない!ってなったところスライサーで試ししてみたら「いいのでは?」となったところが始まりでしたね。
実際にやってみたら「お!これは新しいのでは!」となったと聞いています。

VM:清水さんが思うNUNOUSの推しポイントを教えてください。
清水:廃棄布などをアップサイクルする事業者は多種ありますが、NUNOUSは唯一無二のデザイン・質感・汎用性が魅力だと思います。
本業で染めた色や染めた過程も活かせる工法を大事にしつつ、いろんな活用方法を見つけていけたら嬉しいです。
VM:今後挑戦したいことやはありますか。
清水:廃棄布にもいろんな素材があるので不燃を謳うことができないことが今は課題の1つになっています。それもあり現在は壁面でのアートやサインなど一部に採用していただくことが多いです。
ですが、不燃の課題に関してはアイデアで突破していきたいなと思っています!

「本業で手を抜かず高い水準を保つ=廃棄布は無くならない」という難しく埋もれてしまっていた課題を、NUNOUSという形で新しく生まれ変わらせる取り組みをするセイショク株式会社。
触れてきたことがなかった”布”の世界に潜む課題や製品を知ることができました。
NUNOUS製品は麻布のNEWVOT³に使用しておりますのでご見学お待ちしております◎