ビジネスの種
2026.10.29 UP

ごみをごみにしない。
「分ける」が石坂産業の
資源循環を支える
ーものづくりを知る vol.4

ものづくりを知る
Vol.4「石坂産業株式会社」

 

私たちが日々利用している建物や空間。
新しくつくられる過程を見る機会はあっても、その役目を終えた後にどうなっていくのかを知る機会は多くありません。

今回、「ものづくりを知る」シリーズで訪れたのは、埼玉県三芳町にある石坂産業株式会社。
建設現場から発生する廃棄物を受け入れ、徹底した分別によって資源として循環させる取り組みを行っています。

工場見学を通して見えてきたのは、廃棄物処理の現場ではなく、「ものづくりのその先」を支える現場でした。

石坂産業株式会社

「ごみをごみにしない社会」の実現を目指して、「Zero Waste Design」をビジョンに掲げて資源循環に取り組む企業です。
主に建設系廃棄物を独自の技術と手選別によって徹底的に分別し、減量化・再資源化率98%を実現。さらに廃棄物処理にとどまらず、環境教育や里山再生にも注力しています。
かつて不法投棄の問題を抱えていた里山を再生した「三富今昔村」では、人と自然、文化のつながりを体感できる場を提供。100年先も人と自然が共生できる社会を目指し、循環をデザインする挑戦を続けています。


◎石坂産業株式会社ホームページ

◎研修プログラムについて

建物が解体された、その先へ

石坂産業に運ばれてくるのは、主に建設現場から発生する廃棄物です。

木材やコンクリートなど、分別しやすいものは解体現場である程度仕分けられています。しかし実際には、さまざまな素材が複雑に混ざり合った状態で運び込まれるものも少なくありません。
家を解体した後に残る細かな木片や金属、プラスチック、土砂などが混ざった「土砂系混合廃棄物」。

石坂産業では、こうした分別が難しい廃棄物を細かく仕分けることに力を入れています。

案内いただいた担当者の方は、「私たちの強みは、徹底的に分けることです」と話されていました。

 

石坂産業ならではの強みのひとつが、廃棄物を受け入れる段階で行う徹底した「査定」です。
一般的な処理施設では重量を測って受け入れることが多い中、石坂産業では査定員が申告内容と異なるものや危険物が混入していないか中身をチェックし、適正な処理費用を提示しています。
このひと手間は、正確な資源化を実現するだけでなく、設備の故障や火災、作業員の事故を未然に防ぐ重要な工程。高い再資源化率を支えているのは、工場に入る前から始まっている丁寧な確認作業でした。

搬入された廃棄物にリチウムイオン電池が紛れ込むと、破砕や圧力によって発火する危険があります。実際に処理施設で火災が発生するケースもあり、工場全体の停止や作業員の安全にも関わるため、現場では厳重な確認がおこなわれています。

一般的な軽油式ではなく電気で稼働する重機を導入しています。建物内で排気ガスが発生しないようにし、働く社員の負担を軽減するためです。電動化を進めたことで、2020年には工場で使用する電力の再生可能エネルギー100%化も実現しており、環境への配慮と働きやすさの両立につながっています。

98%という数字を支える、「分ける」技術

石坂産業の高い再資源化率を支えているのは、徹底した「分ける」技術です。
工場内では大型のふるい機や磁力選別機、ベルトコンベアなどを活用し、混合廃棄物を木材、金属、コンクリート、プラスチックなどへと細かく選別。多くの工程を経て、最終的にはミリ単位の土まで取り出していきます。

しかし、その工程を支えているのは機械だけではありません。同じように見える金属でも、現場の社員は色や叩いた時の音まで頼りに素材を見極めています。機械による「分ける」と、人の経験や感覚による「分ける」。
その両方が組み合わさることで、一見すると価値がないようと思われる廃棄物資源に変えようとする徹底的な分別・分級技術で、98%という高い再資源化率を実現しているのです。

捨てられたものに、新しい役割を

 

分別された資源は、さまざまな形で再び社会へ戻っていきます。
コンクリートは再生砕石として道路や造成工事の路盤材などに活用され、瓦は景観材や舗装材として利用されています。
また、混合廃棄物から取り出された土はCYシリーズとして、新たな建設資材に生まれ変わります。

見学では、再生素材を使った天板も見せていただきました。
本来であれば処分されていたものが、新たな製品として人の暮らしの中で再び使われていく。
その姿は、「捨てる」という言葉のイメージを大きく変えるものでした。

 

エコセラサンド

廃瓦を破砕し粒度調整したリサイクル材で、ガーデニング材や防犯対策としても利用されます。

NS-10 / NSタイル

建設系混合廃棄物に含まれる土砂を再資源化して作られた盛土材(NS-10)と、それを用いた建設部材(NSタイル)です。店舗什器・床材などに利用されます。

リサイクルの先にあるもの

 

石坂産業の取り組みを伺う中で印象的だったのは、「リサイクルしたものが使われなければ循環は成立しない」という考え方です。
どれだけ高い技術で資源化しても、その素材を活用する人がいなければ循環は止まってしまいます。
だからこそ石坂産業では、分別や再資源化だけでなく、再生品の活用先づくりや新たな製品開発にも取り組んでいます。

廃棄物を資源に変える。そして、その資源を再び社会へ戻していく。
そんな循環の仕組みづくりまでが、同社のものづくりなのだと感じました。

 

循環を支える、地域への配慮

 

石坂産業では、資源循環だけでなく、近隣住民や周辺環境への配慮も徹底されています。

高いリサイクル率を目指すだけでなく、地域の暮らしや環境にも目を向けた工場づくり。こうした積み重ねも、石坂産業の資源循環を支える大切な取り組みの一つでした。

 

工場の出入口では、道路へ泥や粉じんを持ち出さないよう、トラックのタイヤを洗浄する設備を設置。水を無駄にしないように、雨水を活用しています。

工場内の作業は建屋の中で行われており、施設の周囲には二重の防音壁を設置。工場内の作業音が周辺へ伝わりにくいよう工夫されていました。

VM編集者が見た!感じた!

工場見学前は、正直なところ「産業廃棄物処理」というと、運ばれてきたものを分別し処理する場所というイメージを持っていました。しかし石坂産業で目にしたのは、単にごみを分けるのではなく、その先の活用まで見据えた“意味のある分別”でした。

施設内には、土砂や瓦を再資源化する仕組みをはじめ、「ごみをごみにしない」という考え方が随所に散りばめられており、資源を循環させるための工夫や想いを感じることができました。また、大型設備による選別だけでなく、人の目や経験を活かした手作業も数多く残っており、機械と人の技術が支え合っていることも印象的でした。

普段は見ることのできない“ものづくりのその先”。今回の見学を通して、石坂産業が描く資源循環の世界観に深く触れることができました。ものが役目を終えた後まで考えることも、これからのものづくりに欠かせない視点なのだと感じています。


取材協力

・石坂産業株式会社