親子で楽しめるクラフトキット「キットコット」。
その誕生の裏には、開発中の苦労や、新たな仕事への挑戦もありました。今回は、企画から形になるまでの道のりを、開発担当のMさんに伺いました。
ーー自分の想いや意見を共有して形にする過程が難しいことを実感しました
VENICHU MAGAZINE編集部(以下、VM):キットコットの企画はどのようなきっかけで始まったのでしょうか。
Mさん:きっかけはチーム内での雑談でしたね。
子供の時に私が経験した工作の話や当時読んだ絵本の話をしていたら「それ、いいね!作ってみようよ」って言われて。会社から「こういう商品を作ってください」と言われたわけではなくて、ほんとに自然な流れで始まりました。
VM:雑談がきっかけで始まって、ここまで素敵な商品になったんですね!
Mさん:社内でも何度かプレゼンをして、企画として進めることになりました。日本木青連主催の起業家養成塾Bundleの発表会で上司の方がキットコットの取り組みについて発表し、最優秀賞を受賞したことも後押しになったと思います。
VM:開発中に苦労したことはありましたか。
Mさん:商品のコンセプトを決める段階が一番頭を悩ませて、「どんな方向性にするか」「どんな思いを込めるか」っていう部分がすごく難しかったです。人それぞれ価値観が違うので、そこをまとめるのも苦労しましたね。

絵本を描いてくれたnanamiさん(左)と発表会にて受賞した上司のHさん(右)
VM:やりたいことを形にするって難しいですよね。
Mさん:はい。自分の想いや意見を共有して形にする過程が難しいことを実感しました。
他にも、子どもでも組み立てやすい設計にすることも苦労しました。厚みの調整や素材の選定には、かなり時間をかけました。硬すぎると組み立てにくいし、柔らかすぎると壊れやすい。試作品を何度も作って、ようやく納得できる形になりました。
コストもかかるし、でも妥協したくないし。そのあたりの調整も悩みましたね。
VM:では次に、楽しかったこと・やりがいを感じたことを教えてください。
Mさん:絵本を作っていく作業がすごく楽しかったです。展示会で出会ったnanamiさんにお願いして、絵本の世界観を一緒に作りました。色使いやキャラクターの雰囲気も、子ども向けに調整してもらって。今までに触れたことがない世界だったので新鮮で楽しくできました。
あと、自分が考えたものが形になっていって商品ができあがったときは嬉しかったです。

商品のコンセプト

木と繋がり、育む心
『memoring(メモリング)』
子供の成長は、日々を重ねて多くくなる木の年輪のように、たくさんの”想い出”から形づくられていきます。
たとえば、
木の温もりん触れた記憶
自分の手で形にした達成感
家族と協力してつくる喜び
こうした想い出の積み重ねは、子供たちに「学び」や「気づき」を与え、心を豊かに育ててくれます。
そしてやがては自分で考え、行動し、未来を切り拓いていく力へとつながっていきます。
私達は、木を通して、子供たちの成長と未来に寄り添い、”つくる楽しさ”を次の世代に紡いでいきたいと願っています。
Mさん:メモリー(思い出)、森、リング(家族・繋がり)、年輪を組み合わせて『memoring(メモリング)』というコンセプトにしました。
楽しみながら家族で時間を共有できる思い出をつくりたいという方が興味を持ってくださったら嬉しいなと思います。
ーーまずは、もっと多くの人にキットコットを通じた体験を届けられるように
VMAGAZINE:普段はどのようなお仕事をされているのでしょうか。
Mさん:普段は造作家具や床頭台、カタログ什器などの提案販売を担当しています。今回のような商品開発は、コンセプト設計から実行まで全部やるので、また全然違いますね。
VM:この数年でいろんなお仕事を経験されたと思いますが、今までのお仕事で楽しかったことを教えてください。
Mさん:家具を作るお仕事が楽しいですね。家具の図面を加工先様にお渡しして製作していただくので、実際の現場を見ることができるんですよ。組み立てて出来上がっていくところを見ることができるので楽しくて好きです(笑)
VM:実際に現場で見ることができるところが好きなんですね(笑)いいですね!
Mさん:そうですね。ただ、今の部署は配属されてまだあまり時間が経ってないので、まずはいろいろ覚えるところから始めています。

展示会に参加するMさんの様子
VM:今のご自身の仕事スタイルについて、どう感じていますか?
Mさん:新しいことが好きで、同じことをずっとやるのは苦手なので、いろんなジャンルの仕事をさせていただいている今の環境は合ってるのかなと思います!
商品のことや製図のことも知らないことが多く、日々勉強なのですが、、、その分いろんな勉強をさせていただいていますし、ある程度自由に動けるところもあるので(笑)
VM:新しいことが好きなのはMさんのとてもいいところですよね!
Mさん:ありがとうございます!
ただ、広がりすぎるとどれも中途半端になっちゃうので、そこは自分でコントロールしないといけないなって思っています。
VM:今後挑戦したいことはありますか。
Mさん:私は「こんなことやってみたい!」っていうアイデアはたくさんあるのですが、それを形にしていく過程がまだ苦手です。なのでそこを一緒にやってくれる人を見つけていけたらなと思っています。
まずは、もっと多くの人にキットコットを通じた体験を届けられるように、チームで取り組んでいきたいです。
「キットコット」の開発は、ひとつのアイデアから始まり、試行錯誤して、少しずつ形になっていきました。
このプロジェクトには、子どもたちへの教育的な価値、地域資源の活用、そして職人不足という社会課題の解決にもつながっていきます。単なる商品開発にとどまらず、未来への種まきとしての意味を持つ「キットコット」が、今後どのように広がっていくのか楽しみです。