木育体験セット「キットコット」
木のぬくもりを感じながら、親子で一緒にものづくりを楽しめるクラフトキット「キットコット」。
その名前の由来から設計思想、絵本とのコラボレーション、そして今後の展望まで、開発メンバーのMさんにじっくりお話を伺いました。

キットコット
木製クラフトキットと絵本のセット商品

今回のインタビューのお相手
コントラクト課 Mさん(2022入社)
ーーものづくりの楽しさを体験してもらえるように考えました
VENICHU MAGAZINE編集部(以下、VM):「キットコット」という名前には、どんな意味が込められているのでしょうか。
Mさん:「キットコット」という名前は、まず響きが可愛らしく、親しみやすいことがポイントです。
“キット”はクラフトキットの“キット”を意味し、“コット”は子ども向けの商品であること(響き:キットコット=「木と子ども」)を表現しています。
総合的に”親子で楽しめるものづくり体験”をイメージして名付けました。
VM:”親子で楽しめるものづくり体験”。とても素敵ですね!
Mさん:親子で楽しめるように設計しています。特に小さなお子さんと一緒に、ものづくりの楽しさを体験してもらえるように考えました。
サイズもA4くらいで、持ち運びやすくて収納しやすいんです。
「ちゃんと物を入れたいタイプ」の方にもぴったりだと思います。家具としての機能もあるので、使い道が広がります。
VM:商品の形状はどのようにして決まったのでしょうか。
Mさん:実は、私が小学生の頃に作った工作がベースなんです。家に残っていた作品を見て、「これいいやん!」ってなって。それをきっかけに形が決まりました。
当時のものは釘を使って組み立てていたんですが、今回は子どもでも簡単に組み立てられるように、釘を使わない構造にしました。企業様向けには釘を使うタイプもあるんですが、子ども向けには安全性を重視しています。
板の厚みも調整しましたね。分厚すぎると子どもには難しいし、薄すぎると強度が心配なので、試作品を何度も作って検証しました。
最終的には、子どもでも扱いやすい厚みに落ち着きました。
VM:素材にはどんなこだわりがありますか?
Mさん:今回のものは島根県産の木材(ヒノキ)を使っていて、広島の工場で製造しています。
木材の選定も重要で、硬すぎても柔らかすぎてもダメなんです。そのバランスを見ながら、子どもが扱いやすく、かつ丈夫な素材を選びました。
VM:なるほど。ヒノキ以外の木でも作ることは可能なんでしょうか。
Mさん:今後は他の木材でも挑戦していきたいと思っています。
この商品の魅力は、パッケージそのままで販売することもできますが、企業ごとに木材の種類や形状、内容をカスタマイズして提供することも可能なところです。
現在取り組んでいるプロジェクトでは、単なる商品の販売ではなく、木材の選定や説明などの体験も含めて提供できるように動いています。

子供でも組み立て可能なキットコット
ーーいずれはカスタマイズの効く商品に
VM:絵本とのコラボレーションの実現について教えてください。
Mさん:実は今回の絵本は芸術大学の学生さん(nanamiさん)にご協力いただいて作成しました。
nanamiさんとは以前に紅中の麻布オフィス(現NEWVOT³)にておこなった、地方出身者限定グループ展「Not From Tokyo」に出展していただいたときに出会いました。
VM:学生さんとのコラボだったんですね!とても素敵なコラボですね。
Mさん:絵本の文章はnanamiさんが書いてくれて、構成はチームで提案しました。色使いや世界観も子ども向けに調整してもらって。
本当にいいものができたと思います。
VM:先ほどおっしゃっていた「企業ごとのカスタマイズも可能」という点では、絵本もカスタマイズできるのでしょうか。
Mさん:そうですね。企業ごとにオリジナル絵本を作る構想をしています。
引き続き学生さんに絵を描いてもらう試みも進めていきたいですね。

2024年4月に開催した展示会「Not From Tokyo」にて
nanamiさんの展示(一部)

キットコットのオリジナル絵本
ーー記憶に残るものづくりのきっかけになってほしい
VM:キットコットの魅力を改めて教えてください。
Mさん:「キットコット」は単なる商品ではなく、子どもたちにものづくりの楽しさを伝える“体験”の提供できるところが魅力です。
今回構想のきっかけになったのも、私が子供の時に祖母に木工キットを作るイベントに連れて行ってもらったことでした。そこでは釘を打ったり、木を組み立てたりと簡単な作業だけでしたがとても楽しかったと今でも覚えています。
VM:子供の時の楽しかった体験って大人になっても記憶に残りますよね。
Mさん:キットコットを作ることでものづくりの楽しさとか、木の魅力とか、木材・森林のこととか、なんでもいいので興味を持つきっかけになってほしいなと思います。
その子たちが将来的にそういうことに関わる職業に就いてくれて、職人不足や林業の課題解決につながったらおもしろいじゃないですか。
VM:興味を持つことへのきっかけづくりになる商品ということですね。
Mさん:はい。企業向けには、木材や絵本の内容をカスタマイズできるパッケージとして提案して、その企業様が持つ森のお話をベースにした絵本や、そこで伐採された木材を使用したキットなどをノベルティなどに使ってもらえると嬉しいですね。
他にもいろいろ提案できるようになるとこちらもおもしろくなるんじゃないかと考えています。
VM:最後に、Mさんがこの商品で一番伝えたいことを教えてください。
Mさん:この商品は「体験を提供する」ものだと思っています。大人になっても捨てずに家に残っていて、ふとした時に思い出す。そんな記憶に残るものづくりのきっかけになってほしいです。
そんな想いに共感していただける方々が増えていってほしいなと思っています。

「キットコット」は、単なる木製キットではなく、子どもたちの未来や地域の資源、そして人とのつながりを大切にしたプロジェクトです。ものづくりの楽しさを伝える“体験”として、これからどんな広がりを見せるのか、楽しみにしています。