日本は超高齢社会を迎えています。「人生100年時代」という言葉もよく聞かれるようになりましたが、これは平均寿命が伸びることにより、近い将来100年生きるのが当たり前になる時代がくる、という考えを表した言葉です。
長生きする人が増えることは大変喜ばしいことですが、同時に家族の介護問題も切っても切り離せない課題となっています。誰しもがいつかは自分に訪れることであり、決して他人事ではありません。
100年という歳月を生きるうえで、暮らしの場となる住まいを整えることは今後さらに重要なテーマになってくるでしょう。
家族も自分も、皆が安心して快適に住み続けられる住まいづくりのために、今から準備しておきたいバリアフリー化計画について考えてみましょう。
バリアフリー住宅とは?
バリアフリー住宅とは、バリアフリーの考え方を取り入れた住宅のこと。
住宅内の物理的・心理的な障壁(バリア)を取り除き、高齢者や障がいがある人でも安全かつ快適に生活できるよう設計された住宅のことを指します。
では、住宅のバリアフリー化とは具体的にはどのようなことを施せばいいのか、見ていきましょう。
バリアフリー化の基本
段差をなくす
段差をなくすことで、転倒やつまずきのリスクを減らせます。高齢になると足元が不安になり、少しの段差でもケガの原因になります。また車いすでの移動も楽になり、介助者の負担が減ることにも繋がります。
手すりの設置
廊下や階段、トイレ、浴室などに手すりを設置し、日常的な動作をサポートします。手すりにつかまることで足腰にかかる負担が分散され、バランスを取りやすくなります。転倒や転落を防止するためにも、要所に手すりがあれば安心です。
通路を広く
車いすでも通れるよう、廊下や開口部の幅を広くします。車いすでスムーズに移動するには、90cmほどの幅が必要とされています。また、方向を変える際には車いすを左右に旋回する動作が必要なため、150cmほどの十分な広さがあるか確認しましょう。
使いやすい設備
スイッチを低めに設置したり、水栓は長めのレバー式にするなど、操作が簡単な設備を導入します。扉は引き戸が良いでしょう。ドア開閉時に前後に移動する必要がなく、車いすが通るためのスペースも十分に確保した設計がしやすいメリットがあります。
十分な明るさの確保
高齢になると視覚も衰えます。20代と高齢者を比較した時、60代で約2倍、70代になると約3倍の照度が必要と言われています。とは言え、どの部屋も一律に明るくするとかえって目に不快です。生活領域や時間帯によって適した明るさを設定する必要があります。
ヒートショック対策
特に冬場において室内で温度差があると、高齢者が暖かい場所から寒い場所に移動した際に体に負荷がかかり、ヒートショックを引き起こすリスクが高まります。脱衣所や浴室、トイレなど、冷えやすい場所の窓に内窓を設置し気密性と断熱性を高めたり、暖房機器を設置したりして温度差の解消を図りましょう。
部屋ごとのバリアフリー化ポイント
1. 寝室
滑りにくい床材を使用
転倒やつまずきは段差だけではなく、床材が原因で起こることもあるため、滑りにくい床材に変えるのがおすすめです。今後のことも考慮し、車いすでの移動にも耐えられる素材や、自力排泄ができなくなった時に備え掃除のしやすい素材のものを選ぶと良いでしょう。
適切な照明を配置
照明器具は、ベッド上から光源が直接視界に入らないよう配置しましょう。シェード付きの照明や間接照明などを使用することで、睡眠ストレスを抑えることができます。また、フットライトを設置すると、深夜にトイレに行く際などに強い光による刺激を軽減しつつ、安全を確保できます。リモコン操作が可能なものや、人感センサー付きのものが望ましいと言えます。
万が一に備えた装置の設置
呼び出しチャイムのような装置があれば、万が一のトラブルが起きた時でも家族がすぐに対応しやすくなります。
2. 浴室
滑りにくい床材を使用
浴室は転倒が起こりやすい場所のひとつです。水や泡で濡れた床は滑りやすく、足腰の弱くなった高齢者にとっては転倒リスクが一層高まります。床や浴槽の素材は滑りにくいものや水はけの良いタイプを使用するようにしましょう。
低めの浴槽に変える
浴槽の縁を跨ぐことに難しさを感じるようになったら、低めの浴槽に変えることを検討しましょう。身長にもよりますが、一般的に40cm以下の高さにすることで、無理なく跨いで入浴できるとされています。
手すりを設置
立ったり座ったりする動作が多い場所のため、浴室や浴槽の壁側に、縦と横の手すりを設置すると安心です。縦型は立ち座りの動作を主にサポートし、浴槽の壁側や出入り口付近、洗い場のイスの近くなどに設置しましょう。横型は移動をサポートする製品なので、出入り口・洗い場・浴槽を相互に伝い歩きできるよう壁に設置します。
3. トイレ
ドアは引き戸にする
トイレは出入口に段差があることも多いため、段差のない吊り下げタイプの引き戸がおすすめです。介護者も一緒に通れる幅を確保しやすいというメリットもあります。また、鍵は中からだけではなく、外からでも開けられるタイプだと、万が一トイレから出られないような事態になっても家族が対応できます。ドアと一緒に鍵も見直しておきましょう。
手すりを設置
浴室と同様、立ち座りの動作が多い場所のため、手すりを設置しましょう。ドアの開閉時にバランスをとりやすい縦型、トイレまでの伝い歩きには横型が有効なので、両方を兼ね備えたL字型の手すりを設置しておくと便利です。
寝室の近くに設置する
寝室から遠いと夜中のトイレが億劫になり我慢をしてしまったり、冬場だとヒートショックの心配も出てきたりします。そのため、トイレは寝室のなるべく近い場所に設置すると、介護される側もする側も負担が減ります。
4. キッチン
IHクッキングヒーターにする
IH用のキッチンにリフォームすることで、火の消し忘れや、ガス栓の閉め忘れなどの万が一の事故を防ぐことができます。使い慣れたガスコンロと違うため、最初は戸惑われるかもしれませんが、掃除もしやすく、安全かつ便利な機能があるIHに変更することは、ご自身で調理を続けていく上でもメリットが大きいはずです。
カウンターの下にスペースを設ける
車いすに座ったままでも調理ができるよう、キッチンカウンターの下にスペースを取りましょう。一般的なシステムキッチンは、キッチンカウンターの下に扉付きの収納棚が設置されていますが、各メーカーからオープンタイプのものもラインナップされています。車いすでも足や膝が当たることなくキッチンカウンターに接近できて安心です。
カウンターの高さを調整
車いす利用者の目線は110cm、手の届く範囲は60cmとされています。一方、一般的なシステムキッチンは、カウンターの高さが80〜90cmで設計されており、車いす利用者にとっては少し高めになっています。バリアフリー対応キッチンは、カウンターの高さが73〜85cmに設計されているので、利用者にとって使いやすい高さを選びましょう。
スイッチを集める
スイッチで昇降する吊戸棚や、リモコン式の換気扇など、簡単に操作できる設備を導入し、立ち上がらなくてもいい場所にスイッチを集めましょう。
5. 玄関
段差対策
日本では玄関で靴を脱ぐ習慣もあり、必ずと言って良いほど「上がり框」という家に上がるための段差が設けられています。バリアフリーの観点では、段差はできるだけ低くし手すりを設置するか、もしくはスロープタイプの玄関にするのもひとつのアイデアです。
滑りにくい床材を使用
雨の日などの玄関回りは濡れて滑りやすいため、転倒リスクが高まります。水はけが良く乾きやすい素材の床材に変更すると良いでしょう。ただし、ざらざらしすぎる素材は掃除がしにくいというデメリットもあるため、適度なものを選ぶようにしましょう。
ドア幅の拡張・引き戸に変更
玄関のドア幅は90cm以上は確保しましょう。車いすや介護者も一緒に出入りがしやすくなります。ドアは段差のない吊り下げタイプの引き戸がおすすめです。引き戸は歩行器や車いすでも自力で開閉することができ、開き戸のように開けたドアが出入りに邪魔になることもありません。
6. 階段
手すりを両側に設置
階段の両側に手すりを設置することで、転倒の予防ができます。高齢になると腰や背中が曲がってくる人も多いため、使う方の身長や姿勢に合わせた高さに設置するようにしましょう。手すり表面に滑り止め加工が施されているタイプを採用すると、安全性がより向上します。
滑り止め加工&色分け
高齢になると足の踏ん張りや手の握力が弱くなるため、自身の身体を支えることが難しくなるものです。万が一の転倒を予防するには、手すりの設置だけでなく、階段の表面を滑りにくい素材にしたり、段差を識別しやすいよう段差部分の色を変えて区別したりするなどの工夫もあれば安心です。
階段寸法を見直す
一般的に上り下りしやすいとされている階段寸法は、「蹴上げ×2+踏面=60cm」に当てはまる寸法です。建築基準法で定められているのが「蹴上げ23cm以下、踏面15cm以上」ですが、実際は勾配が急なため高齢者には上りづらい階段になってしまいます。バリアフリーを考えると「蹴上げ16cm以下、踏面30cm以上」が理想的と言われています。
階段昇降機を設置
自分の足で階段昇降が難しくなってきた場合、階段昇降機の導入を検討するのも一つの手です。階段昇降機とは利用者が座った状態で階段を昇り降りできるリフトで、建物自体を改修せずとも設置が可能です。椅子に座るタイプや、車いすのまま乗れるタイプがあります。
保険や補助金が利用できるかご確認を!
バリアフリーリフォームの際には、自治体や国が提供する補助金制度を活用できる場合があります。
例えば、介護が必要な人が暮らすご家庭であれば、介護保険制度に基づく住宅改修費支給が該当します。または各市区町村で、介護やバリアフリーを目的とした独自の住宅改修費補助をおこなっている場合もあります。
助成額や支給条件は自治体によって違いがあるので、リフォームを検討している場合は早めに調べておくとよいでしょう。
\バリアフリー住宅で家族の快適な住まいをつくろう/
バリアフリー住宅は高齢者や障がい者にとってだけではなく、小さな子どもも暮らしやすい住まいです。今回紹介したバリアフリー化についてのポイントを参考に、ライフスタイルや家族構成に合わせて、一人ひとりが快適に暮らし続けられる家づくりを考えてみませんか。