紅中の工場見学シリーズ「ものづくりを知る」
ものづくりの現場を訪ねてお聞きしたお話、ものづくりの舞台裏、VM編集者が感じたことをみなさまにお届けします。
大量につくることよりも、長く使われること。早く届けることよりも、きちんと仕上げること。家具工場には、効率だけでは測れない価値観が息づいています。木と向き合い、人の暮らしを想像しながら進められる作業。その積み重ねが、使い続けたくなる家具を生み出してきました。今回は、そんなものづくりの現場を訪ねます。
今回の工場見学先は、柏木工様です。(以下敬称略)
岐阜県・飛騨高山に拠点を置く柏木工は、森とともに歩んできた家具メーカーです。
柏木工では、35年以上にわたりトヨタ生産方式を取り入れ、「一個流し・受注生産」という生産システムを構築してきました。サイズや色、張地などをあらかじめ指定するのではなく、注文ごとに要望を受けてから生産を行うことで、一人ひとりの暮らしに合った家具づくりを実現しています。
こうした体制の背景にあるのは、家具に人が合わせるのではなく、人に寄り添うものを届けたいという考え方。その結果生まれる家具は、使い捨てるものではなく、修理を重ねながら長く使い続けたくなる存在になるといいます。
今回は、その想いが形になる現場を知るため、柏木工の工場を訪れました。
高山本社工場ではイスやテーブルが出来上がるまでの一連の流れを見学することができます。
◎木取り
製材された木材を家具のどの部材に、どの向き・寸法で使うかを決めて切り出す工程です。
木目の流れ、節や反りの有無、強度、見た目を考慮しながら配置を判断します。仕上がりの美しさや耐久性、材料の無駄の少なさを左右するため、木取りは家具づくりの質を大きく決める重要な段階です。
天板、部品などとラインごとに分かれて作業がおこなわれている。
木取りで出る端材はカウンター天板やへ機目のパネル(モザイク)に回し、有効活用。
◎接着
木取り・加工された部材同士を接着剤で固定し、一体の構造にする工程です。
塗布量や塗りムラに注意しながら、適切な圧力をかけて貼り合わせます。接着面の精度や養生時間の管理によって、強度や耐久性、仕上がりの精度が大きく左右されるため、見えない部分ほど丁寧さが求められる重要な工程です。
◎曲木
木材に蒸気や熱、水分を与えて柔らかくし、型に沿わせて曲げる加工工程です。
繊維を切らずに形を変えるため、強度を保ったまま滑らかな曲線を表現できます。乾燥・固定の管理が重要で、椅子の背や肘掛けなど、デザイン性と耐久性が求められる部材に用いられます。
蒸し機から取り出した木材を治具にはめて形作っていく。
温度や湿度によって影響されてしまうため室内環境を整えて、品番ごとに別室で保管。
◎加工
木取りした部材を図面どおりの形状に整える工程です。木材を削る・切る・穴をあける・厚みをそろえるなど、寸法精度をつくる作業が中心になります。
椅子の座ぐりは成形→穴あけ→研磨の順で作業。座ぐりの深さによって座り心地のフィット感を変えているところが柏木工のこだわり。ひとつひとつ職人が手で触って確認しながら作り上げていく。
◎ストア
木材や加工済みの部材を工場内で一定期間保管し、湿度や温度の変化から守りながら、木の含水率や寸法を安定させる工程です。
木材は切断後もしばらく動きが出るため、この段階で落ち着かせることで反りやねじれを防ぎ、後の組み立て精度を高めます。
加工された部品を保管。注文が入り、組み立ての工程に進む際に分かりやすいように分類されて並べられている。動線が良く考えられた配置であり柏木工の細かい気配りも垣間見える部分。
◎組み立て
ほぞ組やダボ、金物などを使い、強度と精度を確保しながら立体に組み上げます。
大切に丁寧に作業をしている見えないところの調整が、使い心地や丈夫さにそのままつながる、ものづくりの大事な仕上げ時間です。
注文が入ると、品番や材種が書かれた生産指示書が用意され、それを基にストアから部材をピックアップ。カートごとに担当を分けることで生産効率が上がる。
カートで運ばれてきた部品を生産指示書を確認し、組み立て。
◎塗装
木部を守るウレタン塗装。
下塗り(木地着色)→中塗り→シーラー研磨→中間着色→上塗り
と何層も重ねることで強く、美しく仕上がります。
1つの製品が塗装工程を完了するまでに乾燥を含めて約1日。柏木工ではこの工程を3人で連携しておこないます。
椅子については吊り下げて塗装。全体に均等に塗装が施されるように回しながらおこなう。色見本を見てムラが無いか、色味が間違っていないかなどを確認。
◎縫製・張り
椅子やソファに布やレザーを仕立て、座り心地をつくり込む工程です。生地を裁断し、形に合わせて縫ってカバーを準備したあと、ウレタンなどのクッション材を重ねて厚みや感触を整えます。最後に、シワが出ないよう張力を均一にかけながらフレームへ固定。
◎梱包・出荷
テーブルなどの大きな製品で、部品ごとに分解されてお届けする場合は梱包する前に一度製品をこの工程で組み立てます。全ての部品が揃っているか、きちんとかみ合うのか。最終確認まで丁寧におこなうことで高い品質を保つことができます。
VM編集者が見た!感じた!
家具づくりには数多くの工程がありますが、柏木工の工場では工程ごとの役割分担が明確で、作業の流れが把握しやすいように動線が設計されているように感じました。
また、どの工程でも確認作業が徹底されています。色味は見本と照合し、表面は手で触れて状態を確認するなど、基準に沿ったチェックが繰り返し行われていました。こうした丁寧な確認の積み重ねによって、柏木工の家具が安定した品質を保って製作されていることを改めて知ることができました。
ショールームにもお伺いしました
柏木工の高山ショールームは家具だけでなく、照明やラグなどの雑貨、室内建具や壁面収納といった建材まで揃っていて、住空間全体の“木の心地よさ”をまとめて体感できます。
柏木工の工場には、長く使われる家具を生み出すための考え方と、それを形にする仕組みが静かに根づいていました。素材を見る目、確認を惜しまない姿勢、工程を支える人の技術。それらが重なり合って、家具は「つくるもの」から「育てていくもの」へと変わっていくのだと感じます。今回の見学は、その本質を改めて教えてくれる時間となりました。
また、「歓迎 株式会社紅中様」のボードをいろんなところに用意してくださったり、見学させていただいてると目を見て挨拶をしてくださるなど、工場見学に対する歓迎ムードをひしひしと感じることができたことがとても心地よく印象的でした。
丁寧な作業に加えて、人柄の良さも家具に表れており「この方たちが作る家具を使いたい!」と思いました。
取材協力